Excel で行う財務諸表をベースにした経営リスク分析(発展編)

経営には不確実性が付いて回ります。発展編ではキャッシュフローも含めて将来にわたる変動の様子を確認します。

基礎編では、財務諸表の情報を参照しながら、Crystal Ball を活用してリスク分析を実施しました。

→Excel で行う財務諸表をベースにした経営リスク分析(リンク)

ここでは、複数年度に渡る場合の財務諸表の シミュレーションモデルをご紹介します。

上記では1年間の業績予測に基づき営業利益を分析しましたが、 今回はモデルを拡張し、売上高や費用にぶれ幅をもたせて 10年先までの純利益を分析する方法をご紹介いたします。

単年度の予測をCrystal Ballで行うのであれば、売上高などの数値を仮定して シナリオを作成するだけで十分なのですが、同じように複数年度に渡るシナリオを 作成するためにはモデルを工夫する必要があります。

その工夫は「売上高を割合で変化させる」方法です。つまり「毎年1億円成長する」という表現ではなく「毎年5%成長する」と表現することで、 ある年の売上高が前年の影響を受けていることをモデル上で表現できます。そして、今回のような純利益の変動、為替の変動、利益の予測、需要の予測など時間で変化するリスク要因を 分析する際に力を発揮するのが「傾向グラフ」です。為替変動モデルや需要予測モデルの分析にに傾向グラフを用いると、 年を追うごとに値のバラつきが大きくなる様子を観察することができます。

シミュレーションモデル

モデルを開くと、財務項目を計算する部分と部門別の売上や 経費がまとめられた部分が目に入ると思います。そして、緑色で塗られた「仮定」のセルと水色で塗られた「予測」のセルの数が 前回よりも増加していることがわかります。

それでは早速シミュレーションを実行してみましょう。なお、それぞれのセルがどのような数式で計算されているのか、そしてどのようなシミュレーションの設定になっているのかについては、モデル中のシート「解説」をご覧ください。

モンテカルロ・シミュレーションとは?
確率分布に従って発生した乱数により要因が変動する数千、数万回のシナリオを自動的に作成することで確率的な評価を実施する手法です。 本検討では10,000回のシナリオを作成し営業利益の変動リスクを評価します。

財務諸表シミュレーションの結果

シミュレーションの結果、以下のことがわかります。

1.2023年の純利益に最も影響を与えるのは、2023年の部門Dの経費

部門Dの売上高が他の部門よりも大きく、それに伴い経費も大きくなっています。そのため全体の売上に最も影響を与えるのは部門Dの経費という結果になっています。

2.年を経ても純利益の幅はほぼ一定

今回のモデルでは、2013年から2017年および2018年から2023年の純利益の幅はあまり変化していないことがわかります。ただし2017年から2018年にかけては減価償却費の関係で、大幅に上昇しています。

さらなる分析

「全社的に業績が悪くなる」「前年の業績がよい場合は次の年の業績は伸び悩む」といったシナリオをシミュレーションで表現するためにはさらに工夫が必要ですが、 今回のモデルを参考に、皆様の財務諸表の分析にCrystal Ballを利用してみてください。

前回の記事の繰り返しにはなりますが、リスク分析ソフト Crystal Ball を利用することでExcel上で様々なモデルを構築し、リスクを考慮した定量的かつ確率的評価により経営分析や計画策定支援を行うことができます。それにより、 社内説明や関係者内でコンセンサス向上の効果も期待できます。

さて、Crystal Ball の活用に関する資料をご準備しております。 各業界における事例をもっと知りたいという方は、 ぜひ下記より資料をダウンロードをしてお役立ていただければと思います。

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