統計とシミュレーション

似たり寄ったりの言葉ですが、使いどころが違います

2つの違いは?

皆様は「統計とシミュレーションの違い」について、考えたことはございますでしょうか。 最初に正解を申し上げてしまうと、

  • 統計:過去のデータから現状を深く知るために活用
  • シミュレーション:データや経験・仮説から未来を想定するために活用

といった違いがあります。

例えばメーカーにおいて、拠点での生産からお客様の手に届くまで、どの地域が一番早いのかを知るのは統計で、そこから何を改善したらどうなるのかを検討するのがシミュレーションという棲み分けになります。

ちなみに、最近ではよくBIツールを使って分析しようという話を聞きますが、大抵は現状の分析を主眼においています。一方でAIツールを使いたい!という話も聞きますが、その場合にはシミュレーションライクな目的が多いかと思われます。

話を戻します。大量の(綺麗な)データがある場合は、 以下のような統計解析が可能です。

  • データの特徴や情報を整理する
  • データから仮説を検証する

一方のシミュレーションは、以下のような検討が可能です。特に前者は仮にデータがなかったとしても、定性的な意見しかなかったとしても、仮説ベースでの検討を進めるのに有用な手段となります。

  • 仮の将来を大量に生み出し検証する
  • データを将来のシナリオ作りに活かす

これらの違いを考えると、ある程度のデータをそろえる努力はした上で、「統計解析して現状を理解した上で、シミュレーションを行い将来の戦略検討に活かす」 というアプローチが肝要であるといえます。

シミュレーションにはモデルが必要

例題:通勤時間の分析

統計とシミュレーションの違いを実感するために、通勤時間に関する例題を考えてみたいと思います。

例:あなたは自宅から会社まで公共交通機関で通勤・通学しています。

2つのルートを選択することができます
⇒ 地下鉄 :遠回りだが、遅延が少ない
⇒ バス  :距離は短いが、渋滞による遅延が多い

Q:所要時間のみに着目した場合、あなたはどちらのルートで通勤・通学しますか?データを取って比較してみましょう。 (モデルダウンロード

統計による現状の分析

例えば、手元に100日間に所要時間のデータがあるとします。 このデータからは以下のことが言えます。

平均値だけで判断すれば、バスのほうが地下鉄より所要時間が短いといえます。 しかしながら、バスは最長で40.4分かかった日があり、地下鉄で一番時間がかかったケースと比較して約5分も余計にかかっています。 それぞれの100日の情報をグラフにすると、以下の結果を得ることができます。

集合横棒グラフを利用

シミュレーションによる戦略立案

さて、このデータをシミュレーションに活かすとどのようなことが言えるでしょうか。 今回は「分布の適合」機能を利用して、過去100日間のデータを確率分布に当てはめてみましょう。 すると、バス・地下鉄の所要時間の分布は以下のようになります。

所要時間の確率分布がわかったら、「仮想的に10,000日間通勤する」ことを考えます。 "仮想的に10000回●●する"ができるシミュレーションといえば、 そう「モンテカルロ・シミュレーション」です。Crystal Ballメニューの「実行」より、シミュレーションを実施しましょう。 どのような結果になるでしょうか。

1.10000日のうち、1回も遅刻しないように家を出発する

バスの所要時間グラフを見ると、バスを使っても遅刻しないようにするためには、 56.3分前に家を出なければなりません。 10000回シミュレーションを実行したときの所要時間の最大値が、56.3分となっているためです。

一方の地下鉄は、最大値が36.2分になっています。 最大値で比較すると、地下鉄は20分も余裕があることがわかります。

2.10000日のうち、99%の確率で遅刻しないように家を出発する

10,000日のうち、99%の確率で遅刻しないようにする、つまり100日は遅刻を許すとすると、どうなるでしょうか。 下のグラフをご覧ください。

99%の確率で遅刻しない出発時刻は、「99パーセンタイル値」として表れます。それぞれの99パーセンタイル値は バス = 39.3分、地下鉄 = 34.6分 と求めることができます。 地下鉄のほうが5分ほど余裕があることがわかります。

今回のサンプルファイルはCrystal Ball でお試しいただけます。ぜひ試用版をダウンロードいただき、お手元でご確認をいただければと思います。

→Crystal Ball 試用版のご案内(リンク)

また、弊社は技術コンサルティング企業として、様々な分野における統計やシミュレーションを扱い、ご支援をさせていただいております。お困りの際にはぜひお声がけください。

資料ダウンロード

弊社の個人情報に関する取り扱いについては「個人情報の取り扱いについて」(プライバシーマーク付与認定済)をご覧ください。