JEPX のスポット取引価格をExcelで確率的に予測

価格は需給により刻一刻と変わります。モンテカルロ・シミュレーションなどの確率的手法を用いて分析されることが多く、Crystal Ball が活用されます。分析例を挙げてご紹介いたします。

  1. エネルギー
  2. JEPX のスポット取引価格をExcelで確率的に分析

スポット取引価格は不確実性が高い

JEPX(一般社団法人 日本卸電力取引所)は卸電力取引市場を開設・運営する取引所となります。ここでは電気が盛んにやり取りが行われていますが、需給に応じて価格が大きく変動しています。再生可能エネルギーの活用が増えており、その不確実性も大きくなっています。

価格の不確実性や、先物・デリバティブ・オプションなどの評価額を取り扱うために、確率的な分析が利用されます。過去のボラティリティに基づいて確率分布を作成してモンテカルロシミュレーションを行う、長期トレンドを組み込んだ予測モデルを作成する、経済指標との相関を持たせて予測する、など様々な方法が利用されます。

確率的な分析を実施できるCrystal Ball というExcelアドインを利用して、実際に簡単な予測を行いました。

JEPXから3年分のデータを利用して予測

今回利用させていただいたデータは、一般社団法人 日本卸電力取引所、取引市場データ、2021年~2023年(https://www.jepx.jp/electricpower/market-data/spot/) となります。

このデータを活用して、2024年8月の電力価格を予測してみます。分析は以下のステップで実施しました。これをお読みいただいている皆様は、今回の分析結果と8月の実績値を比較していただけるかもしれません。

  • データをスプレッドシートに用意
  • カスタム分布機能を活用して過去のデータをそのまま確率分析として定義
  • シミュレーションを実施して平均値やばらつき、パーセンタイル値を確認

以下は詳細となります。

データをスプレッドシートに用意しました。ここでは北海道のエリアプライスを対象に予測します。最も細かい30分単位のデータを利用しており、3年間で5000件ほどのデータになります。

JEPXスポット取引価格の予測_スプレッドシートにデータを準備

データから確率分布を作成していきます。ここでは、過去データをそのまま確率分布として扱っていきます。以下は過去3年間の北海道における8月の価格をまとめたものになります。(Crystal Ballのカスタム分布という機能を利用)

JEPXスポット取引価格の予測_Crystal Ballで過去データを確率分布に設定

先ほどの確率分布に基づいて、モンテカルロ・シミュレーションを実施します。結果が以下のように算出されました。平均は15.77円/kWh、10%値6.23円/kWh、90%値29.40円/kWh、10円以上になる確率が62.60% といった具合です。

今回は、過去の同月3か年分の価格で、次の年の価格を想定するという分析でした。同じ月を利用する妥当性や、何年分を含めればよいのか、そもそも2021年の6月と2022年の6月でどの程度ばらつきが違うのか、事前に確認しておくとよいでしょう。

また、同じデータを用いても、ブートストラップという方法を利用すれば、平均値自体の妥当性を考えて予測することができるようになります。次の記事で触れたいと思います。

複雑な分析を手軽に実施できる

分析と言えばExcelシートで始められる方も多いのではないでしょうか。Excelはどの企業でも導入されています。多くのデータを簡単に扱える上で、計算機能があるため、分析に向いています。一方で、高度な分析を実施するにはあと一歩不足しています。

確率的なモデリング、確率過程(ランダムウォーク)の再現、時系列分析、確率分布のデータからのフィッティング、相関を設定した上での乱数発生、モンテカルロ・シミュレーションなど、取引価格の分析には確率的な分析が取られるケースが多く見られます。これらはCrystal Ball を活用して簡単に実施可能です。

複雑なオプションの価値評価が手軽に可能

スプレッドシートの数式とCrystal Ballの確率分析を組み合わせることで、従来理論的な価値評価が難しかった複雑なオプション契約をシミュレーションベースで価値評価することが可能です。これは日本において実務的にも実施されています。

分析作業の負荷を下げて、透明性を上げる

既にExcel でこうした分析を実施されているかもしれませんが、Crystal Ball を利用すれば後付けで分析を発展させることが可能です。また、そうしたスプレッドシートは動作が重くなりがち、かつ作成に手間がかかりますが、Crystal Ball を利用すればそうした分析の手間から解放されます。本来実施すべき分析そのもの、価値を生む作業にフォーカスすることが可能です。

また、分析の透明性を上げることで説明性を挙げます。投資理由がクリアになっている方が経営層に好まれます。

さらに、個人で業務をする分には、長い関数が織り込まれた複雑なスプレッドシートを利用しても問題ないですが、業務として継続性を持たせるためにはソフトウェアの利用がおすすめです。

日本での活用企業

実際に、電力・ガスなどのインフラ企業、再生可能エネルギー関連企業など、多くの企業でご活用いただいております。

今回実施した分析ですが、以下のような発展が可能かと思います。

バッテリービジネスへの適用

近年増加しているEVを中心としたバッテリーを利活用するビジネスですが、企画段階においては電力価格の不確実性を見越した事業性評価、投資検討が必要となります。より具体的なオペレーションを検討する段階においては、充放電のスケジュール立案なども必要となります。

日射量や長期傾向を考慮した現実的な予測を実施

今回は実施しておりませんが、スポット取引価格に大きく影響を与える、日射量や天候、気温などのデータを活用して予測を実施することも考えられます。また、長期傾向を別で分析したり、予測の上ではシナリオを立てるというケースも考えられます。また、経済指標と相関を持たせたシミュレーションも可能です。

改めて、本記事においては、スポット取引価格の予測について、簡単なサンプルファイルを活用して検討例をお示ししました。不確実性の高い事象においては、定量的に捉えて分析を行うことで、説明性を上げることが重要となります。

以下のフォームより、今回利用したCrystal Ball について、ご紹介資料をお配りしております。また、Crystal Ball は15日間の無料体験を活用すれば、お手元でお試しいただくことも可能です。ぜひお試しください。

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