事業計画に現実感を持たせる分析のポイント

担当者がどれだけ素晴らしいビジョンや先見性を持っていたとしても、 それを裏付け、納得してもらうだけの根拠がなければ交渉は難しくなります。本記事では数値分析で事業計画に根拠を持たせるためのポイントを紹介します。

  1. 事業性評価とは?
  2. 事業計画に現実感を持たせる分析のポイント

新規事業の立ち上げ、年度目標の設定、中期計画を策定するなど、新規および既存のビジネスにおいて将来を見据えるシーンが少なからず存在します。

そうしたシーンでは社内外の関係者、ステークホルダーとの合意を取る必要があります。しかし、冒頭の通り、 担当者がどれだけ素晴らしいビジョンや先見性を持っていたとしても、 それを裏付け、納得してもらうための根拠がなければ交渉は難しくなります。そこで、数値分析で事業計画に根拠を持たせるためのポイントを紹介します。

  • 想定シナリオが豊富にある
  • 計画達成確率を説明できる
  • 重要なリスク・ファクターを把握している

キーワード: 事業評価、事業性評価、定量分析、シナリオ分析、リスク分析、感度分析

起業や新規事業、中期経営計画など、ビジネスにおいて事業計画を策定しなければならない場面は数多く存在します。 事業計画においてはビジョンや戦略、マーケティングなどの様々な分析や企画を行うことになりますが、 それらのプランをより現実的なものとしてアピールするための材料が数値分析です。

たとえば、市場規模が拡大していくという説明だけでなく、具体的に「5年後には100億円規模の市場になる」と数字で語ることで、現実感を増すことができます。

ここで問題となるのは、計画された数字が本当に妥当なのかということです。 将来、ビジネス環境がどうなるかを完璧に知っている人はいないことから、 意思決定者によって頭の中で想定していた数値が違うということが多くあります。

数値分析によって、どれくらいのシナリオを想定できているのか、どの程度計画達成の可能性があるか、 事業に大きな影響を及ぼすリスク要因とその影響の大きさを具体的に示すことで、 事業計画により説得力を持たせることができます。説得力を持たせるためのポイントを3点ご紹介します。

DCF法による事業性評価をExcelシートで実施する様子

信頼できる事業計画であることを示す最も単純な方法は、想定シナリオを増やすことです。 市場の成長性、シェアの拡大状況、為替、仕入れ価格の高騰などの要因について、十分な数のパターンを検証することで、意思決定者に安心感を提供できます。 事業計画は特にこれから始めようとしている事業について数字を作成するために、 想定シナリオが1個しかない場合は楽観的・希望的なシナリオが作成されがちです。

簡単な方法として3点法があります。 妥当と考えられるベースケースに加え、楽観的なベストケースと悲観的なワーストケースの3シナリオを作成する方法です。 特に、ワーストケースは「最悪のシナリオ」の下で事業がどのようになるのかを示す上でも把握しておきたいところです。

数値分析に含まれる様々な要因から、妥当なシナリオを一つ一つ作成していくことは大変な労力が必要となるため、 個別要因を考慮して、数千、数万のシナリオを短時間で作成できるモンテカルロ・シミュレーションを利用することも効果的です。

繰り返しになりますが、ビジネスにおける数字は、様々な要因によって変化する可能性があります。 そのため、可能であればあらかじめ考えられるシナリオを出来る限り作成しておくことも、 事業計画がより現実的なものであることを示すための強力なツールとなります。

事業性評価で想定したシナリオ(キャッシュフロー推移)

事業計画の数値を作成したからといっても、実際は計画よりも良かったり、悪かったりします。 事業を運営していく上で、計画と全く同じ結果が出ることは稀です。

計画策定の際には将来のビジネスを取り巻く要因を仮説として定めているにすぎないため、 計画に対して実績がぶれてしまうのは、ある意味当然のことです。ここで重要なのは、計画を上回る、もしくは下回る可能性がどれくらいあるのかを 見積もっておくことです。不確実であるからこそ、0か1ではなく50%や70%など、確率という尺度で 試算すると効果的です。

このようにすることで、結果説明や次なる計画を策定する際に、当時はどういった想定だったため計画と実績に乖離があったのか、それが確率的にどの程度だったのかを定量的に意思決定者に示すことができます。また、その積み重ねが計画策定の質に大きく影響していきます。

話を戻しますが、計画達成の確率を効果的に見積りたいのであれば、想定したシナリオのうちどれくらいの割合で 計画を達成したものがあるかを分析するのが簡単です。 この方法は、シナリオの数が多いほどより詳細な結果が得られるため、 シミュレーションによって作成した大量のシナリオを活用すると簡単です。

モンテカルロDCFにより算出したNPV

事業計画の数値を作成すると、為替や材料価格、市場規模の伸び方など 様々な要因がシナリオの違いに影響していることに気付くと思います。

為替や市場など、様々な要因がある中で、今評価しようとしている事業について どの要因のリスクが重要なのかを分析するためには、 トルネードチャートなどの感度分析と呼ばれる方法が効果的です。すべての要因をコントロールすることは困難でしょうから、 数多くの要因から、事業計画により大きな影響を与えている要因を見つけておくことで 事業の成否を分けるようなリスクファクターを明らかにすることができます。

重要なリスクファクターが明らかになれば、何故そのリスクファクターに対して 対応を行うべきなのか、事業の収益性を効率良く高めるためには どの要因から施策を行っていけばよいか、などの戦略を論理的に説明することができます。

モンテカルロDCFによるNPV算出と、トルネード分析の結果

モンテカルロ・シミュレーションにより確率論的に事業計画を分析することで、 ビジネスに内在するリスクを事前に把握することが可能となります。 弊社ではExcelへのアドインが可能なリスク分析ツール Crystal Ballを取り扱っています。

以下のフォームより、様々な業界における定量的な事業リスク分析事例、ビジネスへの応用事例について資料をお配りしております。また、Crystal Ball は15日間の無料体験を活用すれば、シミュレーションを動かしてご自身のケースで収支を確認していただけます。さまざまな条件や、事業自体の想定を変えることも可能です。ぜひお試しください。

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